痴呆高齢者へのホームヘルプサービス
伊藤美知
(有)イトーファーマシー ヘルパーステーション沙羅 

介護保険が施行されてすぐの5月からヘルプに入った利用者への1年2ヶ月のサービスを振り返り、痴呆高齢者に対するホームヘルプサービスの取り組みの1例を報告いたします。

Aさん  大正元年生  女  要介護1
長男宅と隣居(独居) 

ヘルプ開始時、痴呆性老人日常生活自立度は、自立。しかし、すぐに不審な行動が見られたため、痴呆症状の出現を疑う。平成12年3月1日付厚生省老人保険福祉局企画課長通知の「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」に基づいた介護手順を日誌におとし、統一されたヘルプを開始。痴呆の進行に伴い、ケース検討、担当者会議を行いながら、ヘルパーの複数化、ヘルプ回数の増加を行う。また、介護経過の記録、ヘルパー間の連絡簿記載の統一を行うことで、随時、利用者の状態を把握することとした。
利用者は始め、来訪するヘルパーをなかなか受け入れることができず、常にヘルパーを見張っているような状態ではあったが、10月には、ヘルパーを待っているようになった。その後は、入れ替わり立ち代わり来訪するヘルパーを頼りにし、利用者の生活が安定した。
1年2ヶ月の間には、食事の用意ができなくなったり、尿失禁、便失禁、幻視等様々な症状が出現したが、都度、利用者に、「どうしたのですか」という問いを投げかけず、生活を正常化(片付けてもとの室内にもどす等)するヘルプを行った。  
その結果、精神的安定が生まれ、家族介護に頼らない利用者の独り暮しが可能となった。そこで、この事例をもとに、痴呆高齢者へのホームヘルプサービスについて、考察を行いまとめてみた。

1.生活のリズム (1週間、1日)をつける介護計画の作成
2.統一した手順表の作成
3.健康チェックの個別化(特徴ある行動のチェック)
4.連絡簿記載の統一化
5.周辺症状発生時、ヘルパーの対応の統一化
6.介護経過の記録から、評価とヘルプ内容の検討を行い、ケア方針を決定(ケア会議)
7.決められた時間に決められたヘルプの継続
8.信頼関係ができるまであせらない介護計画
9.ヘルパーの痴呆症状理解
10.随時、ヘルパーが相談できる体制作り
11.安全な居住空間の確保

利用者の痴呆は、家族や周りの方たちが、気がつかないうちに発症し、進行していきました。ヘルパーが入ることにより、痴呆の発見や、利用者及び家族の生活が維持され、利用者は、ヘルパーを、自分が出来なくなったことを自然に補ってくれる存在として受け止めることができた頃から信頼し、来訪を待つようになりました。
私達は、この事例から、ヘルパーステーションとしての役割がいかに大切かを知りました。これからも、痴呆高齢者の、できる限り在宅で生活したいという気持ちを大切に、質の高いヘルプをして行きたいと考えています。