他の利用者の食事を取る人へ分食のすすめ
伊藤美知 高木みよ子
(有)イトーファーマシー デイハウス沙羅 


Sさんは、平成13年6月から週2〜3回通所
されています。当初は、食事中スタッフが見守っているにもかかわらず、他の利用者の食物をすばやく取り食べてしまわれ、一緒に食事ができない状態でした。そこで、いろいろな対応を試みた結果、分食することにより、Sさんが、他の利用者といっしょに食事ができるようになった経過を報告します。

Sさん   大正 12 年生 女  要介護V
      痴呆度Vb
既往症    脳変性疾患、バセドウ、うつ病、 胃がん 
家族の希望 ショートステイ、デイサービスを利用して在宅介護を希望 

 Sさんは他の利用者やスタッフに暴言、暴力もあり食物への執着が強く消毒薬、洗剤、便、オムツなども口にされることもありました。また、嗜好は特になく、満腹感はないようです。そのため、常に周りの環境に気をつけ見守りが必要でした。
 Sさんは以前入所されていたところで、他の利用者から食事を取られた経験からか、取られないうちに早く食べる食習慣が身につき、いつの間にか落ち着かなくて、他人の食事を取るようになられたのではないかと思われました。
 喉に詰まらないように見守らなければならないほど、早食いをされ、2〜3分で食事が終わりました。しかし、一方では、スタッフが食事を取らずに見守りをしていると、一緒に食べようと言われることがありました。
 どうしたら他の利用者の食事を取りに行かないで、安心してゆっくりとたべられるかを考え、下記の取り組みをしてみました。

1) Sさんの食事を分食する。
2)食事を取りに行かれる時、スタッフが声かけして分食された食事を出す。
3) 身近な目標を立て、状態を見ながら徐々に目標を変えていった。

このような対応をしたことで、Sさんは、しだいに落ち着いて30分位座っていられるようになりました。また、食事量も適量となりました。
この取り組みがうまく行った理由を考察してみました。

1)分食することで、おかわりができ、人の食事を取らなくてもよくなった。
2)タイミングよくおかわりを提供すると、時間をかけて食事することができるようになった。
3)どうしても取りにいくときには、飴などを渡し、口に何か入れてもらった結果、取りにいかなくなった。
4)Sさんが食事を取らなくなったので、他の利用者も安心して食事ができ、Sさんを避けないようになった。そのため、Sさんが安定してきた。

今後も継続していくことで、Sさんや他の利用者も家庭的な雰囲気の中で和やかに食事ができるよう支援していきたいと思います。