痴呆高齢者2事例から、痴呆症状の時間的変化を考察する

鈴木初子
(有)イトーファーマシー デイハウス沙羅 



 痴呆単独通所介護「デイハウス沙羅」では、痴呆による症状のために介護度の高い利用者が多く通所する。今回は、平成13年6月開所当初より現在まで利用している利用者2事例を取り上げ、スタッフがつける毎日の日誌の所感を打ち出し、そこから見えてくる時間的経過に伴う症状の変化を考察した。

Aさん(要介護1→要介護3)
 大正13年生まれ。現在79歳。平成10年頃よりアルツハイマー型痴呆が始まり、神経内科へ受診するが、本人は受診に抵抗を示す。服薬の必要性も理解できず、現在まで服薬していない。症状は緩やかではあるが進行している。

 @今現在と異なる状態を挙げて、月ごとの割合を出した→通所開始1年目は7割以上の確率で、今とは異な  る、軽い症状が目立つ。2年目に入ると症状はかなり進行し、平成14年の秋頃からは今とほぼ同じ状態で  ある。緩やかではあるが、確実に痴呆症状が進んでいる。
 A感情面での変化を見る→通所開始当初は、何か言われたことに対しての感情を、数時間は保つことができ  ており、苦手だと思った相手に近づかない等の行動がとれていた。平成14年に入ると、不都合なことが  起きると「帰る」という表現で表すようになる。感じたことを正確に言葉にしたり表情に表れたりできた  が、抱いた感情を数分保つことも難しくなり、今年になってからは即時記憶がなくなってきた。投げかけ  た言葉に対して、正確な返答が返ってこなくなる。また、長い文章での話をしなくなる。
  しかし、通常では考えられないほどの「優しさ」があり、それは消えることがない。

Bさん(要介護2→要介護4)
 大正6年生まれ。現在86歳。アルツハイマー型痴呆。平成12年頃から記憶能力が著明に低下。物を紛失したり、誰かに取られた等の妄想があり、時に夜間興奮状態になる。精神科受診し、平成12年12月よりアリセプト服用。薬で落ち着き、ADLも安定していたが、今年に入り軽い脳梗塞を起こし、症状が急に悪化してきている。平成14年4月までは、デイサービス中に問題となる行動、言動は全く見られなかった。

 @身体的な変化を見る→平成14年4月より、足のふらつきが始まる。見守りが必要となり、入浴やアクティ  ビティを休む日が出てくる。自宅での変化が先に表れデイでは「外の顔」をしていたせいか、頑張ってし  まう。同年9月頃より、方向や着衣などがわからなくなってきた。
 A排泄に関しての変化を見る→平成14年11月トイレまで間に合わないという形で、デイでの失禁が始まる  。本人は涙を流して恥じるが、症状が進むにつれて、その気持ちも徐々に薄らいでいく。また、失禁に気  づかないことも多くなってきている。
  しかし、初対面の人に対しては、今も「外の顔」を保つことができる。

 口演では、今後どのような経過をたどるのかを推測し、それに伴うケアの方針を考えたい。