行為動作分析を介護評価に生かす
伊藤美知
(有)イトーファーマシー 

前回の発表で、行為動作分析に基づく介助法を発表したが、今回は、行為動作分析を介護評価に繋げる取り組みの報告を行う。
痴呆高齢者の行為動作を分解することによって、痴呆高齢者に見られる障害のありかを明確化することができる。さらに、介護者、要介護者双方の行為動作を分解しデータを日々蓄積することによって、介護評価を客観化し得る。介護をその都度、介護者及び要介護者の双方から評価する。これらのデータを、PCに入力することで、変化をグラフ化でき、介護の評価を視覚的に把握できるようになる。
まず、利用者の行為動作のひとつひとつの動作に対し、評価動作区分を4分類した。

1項目:
 1. 利用者の基本動作
 2. 介助者の基本動作
 3. 利用者かつ介助者の基本動作
2項目:
 1. 身体的項目
 2. 自立支援項目
 3. ADL項目
3項目:周辺症状項目
4項目:情緒面項目(意欲項目)

これらの項目ごとに、

1.介護計画作成時:「できる」「できない」
2.提供時意欲:「ある」「なし」
3.介護時一人で:「できる」「できない」と判断
4.ヘルパー介助:「した」「しない」
5.結果:「できた」「できない」

と動作ごとに入力作業を行った。

この取り組みによって、介護者が利用者の「できること」 「できないこと」を意識して介助を行うようになり、明確になった障害のありかの変化を、グラフなどで視覚的に捉えることが可能となった。
日々進行してゆく痴呆の方の行為動作推移をケアに生かす事は、


1. できないことに的確に介助ができる。
2. 介助の見直しに役立つ。
3. スタッフが利用者の状況を具体的に把握できる。
4. 家族の方に利用者の状況を具体的に理解してもらえる。
5. スタッフと家族が統一した介助をすることができる。

などの効果が期待できる。
痴呆性高齢者の生活を支える基本は、日々の生活が穏やかに、ゆらぎを生むことなく過ごしてゆけることと考えている。生活の安定は心の安定を生む。そのためにも、利用者の生活行為を介護者が十分に理解し、介助してゆく事が大切になってくる。その一つの方法として、行為動作分析を評価に取り入れる試みをおこなった。
口演では、10週間のデータをもとに、利用者の具体的な変化を示す。