認定調査における認知症者への観察と対応のポイント
認知症者への面接の方法について


原田富士子・吉川和子
(有)イトーファーマシー 居宅介護支援事業所 沙羅

【目的】
 介護保険の認定調査は、対象者が要介護、要支援状態にあるかどうか、あるとすればどの程度かの第一次判定を行う基礎となるものである。認定結果は介護サービスの給付額に結びつくことから、客観的で的確な判断が求められる。
 私は平成13年度から認定調査を行ってきたが、私自身、本人の心身の状況を正しく把握することの難しさを感じ、認知症者の判定の結果が調査員の面接の方法によっても、かなり左右されることがわかってきた。
そこで、認知症の有無とその程度を質問項目から明らかにしていくには様々な工夫と面接の技術が必要だと考え、考察を試みることにした。

【方法】
今までの認定調査を振り返り、以下の観察のポイントを精査し、検討を加えた。
 1. 訪問時の調査員の視点
 2. 居室での非言語的な情報の収集方法
 3. 調査対象者の心理
 4. 質問項目への抵抗感に対しての対応
 5. 答えられない質問への対応
 6. 家族からの聞き取り

【結果】
 1. 認定調査は、調査員が対象者の家の玄関さきに立った時から始まっているという意識をもつことが求められる。
 2. 本人の居室に入った時の部屋の様子や話しかけた時の反応、家族の様子などを調査員は敏感に五感で感じ取る必要がある。
 3. 調査対象者は「できない」ことがあっても、「できる」と答える傾向が強い。
 4. 質問に答えたがらなかったり、家族に助けを求めたりすることが認知症者に見られることが多い。
 5. 答えられなかった質問に対しては、本人を追い詰めるような聞き方をせず、時間をおいて、別の言葉で問いかけるなどの工夫をする。
 6. 本人の答えと家族の答えを聞き、総合的に判断する。

【まとめ】
 私は認定調査を行う際に大切なことは、できるだけ相手のプライドを傷つけないような対応を心がけ、緊張をほぐすような話しかたをするということ、調査対象者と家族に不快感を与えずに調査を終了することだと考えている。
その為には、常に受容的な態度で相手の感情を受け止め、質問することにのみ囚われずに相手の訴えたいこと、伝えたいことを時間の許す限りよく聴くことだと考えている。
口演では、質問の仕方など更に具体的な例をあげ、認知症者への面接の技術について提案していきたい。